「白石くんお疲れー!」 たった今、リレーを終えた白石くんを見つけて 少し離れたところから彼に向かって叫んだ。 白石くんは誰に言われたのかわからなくてキョロキョロしてた。 それが可笑しくてくすくす笑ってたら、気付いた白石くんが 小走りでこっちへ向かってきた。 「さんか。誰かと思ったわ」 「かっこよかったよ!一位おめでとう」 「おおきに。1位なれたのは謙也のおかげでもあるけどなぁ」 そう言って笑う白石くんはものすごくかっこよくてキラキラしてる。 部長で、委員長で、パーフェクトで、優しくて。 そんな白石くんがあたしは結構前から好きだったりする。 けれど、告白してふられて今の関係じゃなくなるのが怖くてなかなか告白なんてできない。 「さんは何か出ぇへんの?」 「んー、実はこの次の借り物競争に出るんだよねー…」 「ほんま?俺も出るねん」 ええ!?嘘だあ!じゃあ、白石くんのかっこいい姿デジカメで撮れないよー…。 あ、でももしかしたらあたしが白石くんより先のレースだったら 終わった後に撮れるかも☆ 白石くんより先のレースであることを祈るしかない! 「じゃあ、集合場所一緒に行かへん?」 「えっ?いいの?」 「さんが迷惑やないんやったら」 「全然迷惑じゃない!(むしろ、嬉しい!)」 ほな、行こか。そう言った白石くんと並んで集合場所に向かった。 途中で謙也と会って「お前等2組の代表なんやから頑張ってなー!」と プレッシャーをかけられた。そんなにあたしに期待しないでね! 集合場所に着くと、早くもコールしていた。 どうか、白石くんより前のレースでありますように! と願いながら先生の声を聞いてると 『第3レース、3年2組ー!』 と言われた。あたしは返事をしながら先生のところへ向かって指定された場所に座る。 やった!白石くんより前だ!☆ なんて喜んでいたら、次に先生が名前を呼んだのは 『同じく第3レース、3年2組白石蔵ノ介ー!』 …白石くんだった。 「なんや、同じレースやん」 「本当だね…(写真ー…)」 「頑張ろうな」 「そうだね」 白石くんと一緒なレースで隣は嬉しいけど、写真がー…! こんなんだったら友達に頼んでおけばよかった。 それからあっという間にあたしたちのレースの番が来た。 「つ、次だよ…!白石くん…!」 「せやなぁ。さん、えらい緊張しとるな」 「だって、第1レースの人みたいに銀さんおんぶしてゴールしろとかだったらどうする!?」 「そんなん女の子にはあらへんって」 「だ、だけど…!」 『では、第3レースのみなさん、位置についてー』 先生がそう放送で言ったときに、体が少し震えた。 心臓がやばい!ドキドキ言ってる!どうか、お題が簡単なものでありますように! そんなときに隣の白石くんが「大丈夫やって。頑張ろ」と背中をポンッとたたいてくれた。 そしたら少し緊張がほぐれた気がする。 よ、よし!2組の代表として頑張ろう…! 『よーい…どんっ!』 ピストルが鳴った。 あたしは全速力で目の前のお題が書いてある紙のところまで走る。 そしてピンク色の紙を手に取って中身を見た。 「……す、好きな人ォ!?」 そこには『好きな人』とかかれていた。 う、嘘でしょー!?なんで!?第1レースも第2レースもこんなんなかったでしょ! 好きな人って…あの人しかいないじゃん! 同じレースで走ってる白石くんだよ…。これってアリ? 同じレースの人選ぶのってダメじゃないの? だからって他の人選ぶのもなぁ…。…いいや。いちかばちかで白石くんに頼んでみよう。 ゴールしてお題を見せなきゃいいんだ。 もし白石くんがさっきみたいに銀さんをおんぶしてゴールとかいうお題だったら 銀さんも連れて一緒にゴールしちゃえばいいことだし! あたしは遠くで紙を見つめている白石くんを見た。 「白石くんのところに行かないとっ」 なんて思いながら走ってると、白石くんと目が合って。 彼もこっちへ向かって走ってきた。 よしっ!いちかばちかで言うぞ! 「白石くん、あたしと一緒に走ってくれませんか!?」 「さん、俺と一緒に走ってくれへん?」 白石くんと声が重なった。 あたしは下げた頭を勢いよく上げて白石くんを見る。 白石くんも驚いた顔してあたしを見てる。 「え?今なんて?」 「いや、さんこそ今何て言ったん?」 「え、じゃあ、せーので言おう?」 「せーのっ」 「「一緒に走ってください」」 再びあたしと白石くんは驚いた顔をする。 あたしはともかく、白石くんはどうしてあたしなんだろう。 も、もしかして同じクラスでぶさいくな人とか!? それとも、帰宅部とか!? 「まあ、ともかくそれならよかったわ。さん、ほら」 白石くんは手を差し出してきた。 えっ?とか一瞬ドキッとした自分が恥ずかしい。 そういえば借り物競争で一緒に走る人とは手を繋いで走らないといけないんだっけ。 あたしがオズオズ手を差し出すと白石くんがぎゅって握ってきた。 そして一緒にゴールへ向かって走り出す。 「ねえ、白石くんっ、お題どんなんだったの?」 「んー、秘密やな」 「えー!」 「さんこそ何やったん?」 「教えない!」 「お互い様やん」 「けど気になる!」 「それはこっちのセリフやで」 お題は『好きな人』でした。 なんて言えるわけないじゃないですか、白石くん! とか思ってたら、あっという間にゴールに着いた。 どうやら1位だったらしい。遠くから謙也の「お前等ようやったでー!」って声が聞こえた。 「では、1位のお2人にはお題を発表してもらいます!」 ステージに上がらされて、司会者らしき人がそう言った。 …ええ!?なにそれ!!? 「き、聞いてないよ!」 「しかし、1位になった方にはお題を発表してもらうというルールがありますので」 「や、やだ!」 「そう言われましても…」 「さん、ええやん。ほな一緒に言うってどうや?」 「一緒に?」 「せや。やったらええんとちゃう?」 白石くんと一緒に言えば、少しは白石くんの声でみんなはあたしのお題が 聞きづらくなるかもしれない…! あたしは白石くんと一緒にお題を言うことにした。 「じゃあ、またせーのでの合図でね」 「了解」 「せーのっ」 「「好きな人!!!」」 …うっそ。今もろ声かぶったよね。 驚いてあたしは口を開けたまま白石くんを見る。 けれど彼は余裕そうに「一緒やん」と笑っていた。 わ、笑ってる場合じゃないよ! 白石くんのお題『好きな人』 イコール あたしになっちゃってるよ! 「間違ってへんよ?俺の好きな人、さんやし」 「…ええええ!?!」 「けど、さんもお題一緒やったのは予想外やなぁ」 「…!」 「さんと俺、両思いやなぁ」 し、白石くん!貴方わかってますか!今、全校生徒の前で言ってるんですよ! マイクばっちし繋がってますから!!!! ほら!謙也なんて口開けて間抜けな顔してるよ! アタフタしてると、白石くんに「」って呼ばれた。 うわああ!だって!呼び捨て! あたし、もう死んじゃいそう…! 「好きやで」 そう言ったあとに白石くんは、ちゅっとあたしのほっぺにキスをした。 その途端、(おそらく)全校女子生徒がきゃーっと叫んだ。 あたしもまた驚いて白石くんを見る。 すると「顔、真っ赤やで」とくすっと笑われた。 あなたのせいですよ…! 「は?の口から聞きたいんやけど」 「な、なにを…」 「好きって」 またあなたは何をおっしゃってるの…! この全校生徒の前で「好き」って言える? (あ、白石くんはさっき言ったんだ) あたしは無理だよう…! 白石くん1人の前でも言えない、チキンなんだから。 だけど白石くんは「、」って名前を呼ぶから。 甘い声で、待ってるようにあたしを見て呼ぶから。 恥を捨てて、小さな声で 「あたしも、白石くんが、好き…です」 と言った。そしたら彼は「俺も」って言って ぎゅっと抱きしめてくれた。 (お前等、ようやるわー…。 By.謙也) (10.9.26) |